コロナ陽性になった話 3

療養生活で助かったもの

人間の生存本能としてとか、免疫反応として、熱が出てウィルスを殺そうとした後は抗体を作るためにしっかり栄養を摂る必要がある。と、相変わらずインフルエンザの治癒の経過を参考に考えていて、食べられないとは言っていられないなと思った。
けれど、これが一人暮らし療養の不便なところで、食事の準備も相変わらず自分でやらなければならない。台所に立つのはなかなか体力が要る。
食べなければという気持ちと相反して、身体は極力動かしたくない。しんどい。
おかげで支援してもらった物品がとても役に立った。

保健所から提供された食料品の中には、「レトルトシチュー」や「丼のもと」「おかゆ」など、温めるだけで食べられる柔らかいものが多く入っており、野菜ジュース、ビタミンゼリー、フルーツゼリーはとても嬉しかった。カットフルーツのシロップ漬けも入っていたけれど、こちらは喜んだものの、意外に療養最後の方まで食べられなかった。
最初の主食は野菜ジュースとスポーツドリンク、経口補水液、飲むビタミンゼリーなど。
電話の問診でも先生から、1日1リットルは水分を頑張って飲むように言われていた。水分だけは意識して摂っていたけれど、段々と唇が乾きチアノーゼ(唇が紫になったり)が酷くなっていった。問診の際、顔色や唇の色を聞かれるので、ちゃんと鏡を見るきっかけにもなっていた。疲れた顔の自分を見ると、「しっかりしよう」と思えた。

パルスオキシメーターを届けてもらっていたので血中酸素飽和度は計ることができたため、唇の紫色はなかなか改善しなかったものの、数値が96〜98で安定しているのが見て取れたので、顔色が悪くてもちょっと安心材料になった。

ただ、酸素飽和度が安定していても、これがいつ急激に下がるのか、咳が酷くなって呼吸ができなくなったりして救急車が間に合わない、なんてことになるなら、スポーツで使うような酸素スプレーを用意しておいた方がいいのか?という一抹の不安は拭えませんでした。
重症化して呼吸に問題があるということなら、実際は人工呼吸器ECMOのようなものが必要で、スプレーでは役に立たない状態になるのが本当のところだと思います。もしも酸素スプレーで補えるものなら、きっと物資に含まれてもいるでしょうし。
時間をかけて段々悪くなるのではなく、急激に数時間のうちに悪化していく。というのが未知数で、それが一番の懸念点であり、不安にさせる部分だった。

個人的に助かったものまとめ

・野菜ジュース、スポーツドリンクなどの飲んで栄養がとれるもの
(人によってはプロテインとか、好みと希望により様々なパターンがありそう)
・市販の風邪薬、咳止め、頭痛薬(鎮痛剤)、温めるアイマスクや湿布薬など
(熱の出る人は解熱剤や冷やすものも必要でしょうかね)
・体温計、パルスオキシメーター(貸し出しあり)
・レトルトや缶詰など、大して調理しなくても食べられる柔らか食品

普段ストックしていない食材たち。食べるものは毎日のことだし、病気の時は食べられるものが限られている上に「作れない」「栄養摂りたい」なので。

不安だったこと

ひとつめは上記で書いた通り、たったひとりで部屋にいて、急激に悪化して死んでた。っていうのが最悪のパターン。毎朝、毎夕に保健所からの連絡があるから、そこで連絡がつかないと家族に連絡が行き、それでも連絡がつかなければ翌日とかまで待ってみるのか、その状態が続けば安否確認に玄関の外まで来てくれるのかもしれない。見つかるのは比較的早いかなとか、具体的なことを考えたりもしたけれど、気力なく片付かない部屋に横たわりながら、その瞬間のために今、部屋を片付けるってことはできないなと思ったこと。

ふたつめはオートロックでマンション1階に集合郵便ボックスがあるけれど、それを玄関から出て見に行くことができず、郵便物が溜まっていたらどうしようかと思っていたこと。
不在にしていると思われるのもなんだし、重要な書類なども書留などでなければ声をかけてもらえないから入りっぱなしにしておくのが不安だった。
ちなみに、書留めの配達に来た郵便配達員さんにオートロックでの応答の際に、「ウチのポストから郵便物溢れたりしていませんか?」と、確認してもらえたので良かった。

そして、郵便物の心配はもうひとつ。保健所から咳止めを送ってもらった際に、オートロックなのでポストに入れないように書いて欲しいと伝えたにも関わらず届かなかったこと。(封筒の中に書いてあったので役割を果たさず…)おそらくポストに入っていると思われたので、それを確かめに玄関を出て1階に降りれば、きっと手に入るだろうにそれができない。

咳がひどいから今すぐにでも取りに行きたいのにできないというのは、ほんの数日のことなのにとてもつらく感じました。咳が出続けて辛くても取りに行けないという状況下で、家族は本州にいてポストの中身を届けてもらえる身内が近くにいない。玄関を出て自分の部屋までの距離だけのために会社の人か誰かに助けてもらわなくてはならなかった。その時は、前の職場で仲良くしてくれていたお友達が声をかけてくれたので、お言葉に甘え、集合ポストから玄関の外まで運んでもらえて本当に助かりました。
気遣いの人で、ついでにいろいろ買い出しもして差し入れてくれて、スポーツドリンクなどの飲み物やのど飴、栄養を考えて手軽に摂れる食料まで入れてくれていました。
大きなペットボトルの飲料って重たいのに…。助けてくれる人がいなかったら、と思うと、誰に頼めるだろうと思っていた時期の不安は地味に、「いっそ玄関を出て取りに行ってはダメなのか?」と、療養所のホテルを脱出した人みたいな思考を誘発させるものでした。

昨日と今日で、つい一週間前まで利用していた玄関の外へ出られない。陽性の時にだって出入りしていた場所なのに、それをしてはダメだと、自分の良心から玄関の扉を開けることはできなかったし、人様に迷惑をかけてしまったと感じたけれど、これがウィルス罹患者の辛いところ。本人のモラルも問われる気がします。

不安な中、救ってくれるのはやっぱり、声をかけ、気にかけてくれる人がいるってことなのかもしれません。